‟ Les psy causent ” ー 心は「すったもんだ」 ー
2016/06/04
雑誌 PsyCauseの日本特集号が刊行されたことを、先日のブログでお知らせしました。
この特集は、一昨年(2014年)秋に京都において、森田療法を主なテーマとして国際PsyCause学会を開催したことに端を発します。学会の成果を中心に、翌年(2015年)の学会誌に日本特集を組もうという企画が生まれたのでした。そして“Cahier Japonais”(日本についての論考)の号がやっと日の目を見ました。2015年の最終号ですが、刊行が遅れて、本年3月末に出たものです。
この号の編集には当方も介入しました。しかし相手方には、特集号の刊行を、今後のさらなる日仏交流につなぐ礎石にしようとする目論みがありました。京都を中心とするわれわれ西日本の少人数のグループには、そんな相手の希望に応じるだけの組織力がありません。この特集号の発行の水面下には、相手方との間にそのような葛藤がありました。フランス語圏とは言え、国際的な学会組織とわれわれ少人数が渡り合うのはかなり無理があって、骨が折れます。
実を言えば、一昨年に学会を引き受けざるを得なくなった時点で、日本国内の francophone のプシ関係の先生方や、あるいは個人を超えて組織として PsyCause学会と趣旨を共有するところが多いと思われる日本の学会、とりわけ「多文化間精神医学会」のような学会組織に、交流をお引き受け願えればと、内心考え続けてきました。しかし当面の学会開催、三聖病院の閉院という事態、日本特集号編集など、すったもんだで現在に至ります。
日本特集のこの号には、雑誌の各論文にカラー写真が添えられました(陰の声あり:文章が主体か、カラー写真が主体か)。それはよいとしても(陰の声:よいかどうかわからない)、日本側から寄稿した論文に添えられた写真の大半は、一昨年にフランス人たちが来訪したときに、京都や奈良の観光に出かけて撮影したものです。写真としてはまずまず美しく撮れています(陰の声:写真は真実を写しているか)。極めつけは雑誌の表紙の写真です。フランス人たちは、日本語の表意文字としての「観光」を知らないようでした。「光」を観るより「影」を観よ。雑誌を観た感想として、これからそういう皮肉を相手に届けようと思うのですが…(陰の声:野暮なこと)。
雑誌の表紙には、小さな文字で書いてあります。“Les psy causent”と。幸いなるかな、日本語の読めない精神分析家たち。こちらのすったもんだも知らないで。
でも心はいつもすったもんだでよいのです(陰の声:よいも悪いもない)。
※ いくつかの論文の要旨を、追って紹介していく予定です。