三聖病院の咲けない桜

2015/01/26

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 ひたひたと、病院の建物の解体へ向けて、崩壊の足音が近づいています。今は、春の嵐の前の静けさのようなとき。
 病院の門を入ったところに、大きなソメイヨシノの木があります。ソメイヨシノは山桜に近い種のようで、春に花を咲かせてくれなければ、ただの雑木のように見えています。建物の解体が始まれば、出入り口近くにあるこの木は、まずは工事の通路を妨げる邪魔者になります。
 春は遠くはないのに、この木は切り倒されて、花を咲かせることはないでしょう。
 

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 解体の前兆。

 

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 様々な貴重品や資料は、難を逃れるため物置に押し込められた。地蔵様たちもこの中に閉じ込められたらしい。

 

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 金魚たちはまだ生存している。別の池の鯉たちは行方不明。

 

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 まだ落花しない一輪のバラ。

 

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 1月25日(日曜)、玄関に十数人の履きものが並んでいる。

 終わったはずの院長の講話がまだおこなわれている。不思議な病院である。

 

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 朽ちた木に過去の入院者によって、「希望」などと書かれたものが残っている。

 

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 梅は寒苦に耐えて咲く。門の外の紅梅の木に蕾がふくらみつつある。