クリニックではありません

2020/01/25


<クリニックではありません>
 
 当方は、クリニックではありません!
 診療を行うクリニックや心理カウンセリングを行う相談機関ではありません。
 
 当研究所の理念などは、ホームページの表紙にあたるページに明記している通りです。
 森田療法という優れた療法―というより生き方ですが―の意義とあり方に関心をお持ちの方々と、広い意味で、その研究上の交流をはかろうと意図しています。職種を問わず、同じ志しを有する方々と、日本中遠くても近くても、意見交換、情報交換をして、共に勉強しましょう、という提案をして、京都森田療法研究所という名のもとに、いわば研究交差点のような機能をしようとしています。それ以上でも、それ以下でもありません。
 
 これを書いているとき、たまたまブルガリアの心理学者からお手紙が届きました。
 台湾の方やフランスの方々とも交流があります。ヨーロッパは遠いですが、メールでのやりとりで、地球上の距離を越えて、かなり交流が可能です。そんな時代になりました。
 
 さて一方で、困る問題もありますので、ここに記しておきます。
 この研究所を森田療法のクリニックかカウンセリング機関とお間違えになる方も、一部にはいらっしゃるようなのです。京都地区で森田療法専門機関を探して、勘違いをなさるのかもしれませんが。
 
 受診機関を求めて、お困りのかたがたもいらっしゃることでしょう。そのようなかたがたのご不自由はお察しします。しかし京都地区も、森田療法の無医村ではないと思います。どうぞお間違えなきようにお願いします。ご本人様、ご家族様、また森田療法関係者のかたがたにお願いします。当方のホームページに明記している趣旨を正確にご理解下さい。そして早合点なさらないで下さい。
 ご理解のほどを、改めてお願いする次第です。
 

京都森田療法研究所

主宰者 岡本重慶

第37回日本森田療法学会・シンポジウムⅠ-3「仏教、禅の叡智と森田療法―『生老病死』の苦から『煩悩即菩提』へ―」の抄録

2019/10/08

   第37回日本森田療法学会が、10月5日、6日に浜松にて開催されました。10月5日に「森田療法成立100年、森田理論の再考」のシンポジウムが開催され、シンポジストの1人として、発表させて頂きました。発表内容については、追って「研究ノート」欄に全スライドと共に説明を添えて、提示します。
   なお、学会前の抄録集に出た、発表前の抄録があります。遅まきながら、以下にそれを掲載しておきます。
 
 

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   第37回日本森田療法学会
   シンポジウムⅠ-3 森田療法成立100年

   2019.10.5



   仏教、禅の叡智と森田療法
   ―「生老病死」の苦から「煩悩即菩提」へ―


 

   京都森田療法研究所
   岡本 重慶

 

   釈尊、親鸞、白隠はいずれも「生老病死」の苦による強迫観念に悩み、大疑の末に悟った神経質者であった―。仏教や禅と療法との深い関わりを示す森田の言説である。療法の成立百年になるこの機会に、苦や煩悩という課題を原点として療法が出来上がった流れを、仏教や禅の面から見直したい。 

   森田が幼少より親しんだ真言宗では、人間の煩悩を否定的に捉えない。そのような煩悩観を下地に、森田は「生の欲望」を肯定し、重視することになる。また井上円了の影響の下、仏教周辺の様々な民間の通俗療法に関心を持ち、破邪顕正を経てそこから自然良能を生かすことを学んだ。 

   神経衰弱については明治40年前後から外来診療を始め、催眠や説得や生活正規法 で工夫を凝らした。しかし強迫観念の治療に難渋し、明治42年の論文でそれを禅語の「繋驢橛」に喩え、煩悶者を解脱させるために宗教家の示教を切に希うと表明した。発作性神経症の予期恐怖に対しては、暗示的に庇護を保証して恐怖突入をさせ、無事の経過を見た後に「煩悩即菩提」を説諭した。森田自身が大学一年の試験時に必死で猛勉強をしたら症状は起こらず好成績を得た体験が前提にあった。だが、かかる「煩悩即菩提」は煩悩から菩提へという二元論の域を出ない。入院療法は大正8年に神経衰弱の永松婦長を自宅に泊めて家事をさせたことを発端とするが、難治の不潔恐怖の谷田部夫人と森田の迫真の対決が、双方にとり「煩悩即菩提」の本物の体験となった。かくして入院第一期で苦悩と一体化する絶対臥褥が一層重要性を帯びていく。療法の本旨「事実唯真」の語の典拠には諸説あるが、これは真言宗の言葉「即事而真」(事実が即ち真実、の意)の言い換えであろう。 

   禅僧との出会いとして、明治43年の両忘会の釈宗活老師への参禅や、大正8年に慈恵医専を卒業した教え子の禅僧、宇佐玄雄との交流がある。森田は療法名として、宇佐が提案した「自覚療法」を肯定的に受けとめた。参禅体験や宇佐との関係の詳細は当日に譲る。一方真宗との関係も深い。行者の「はからい」を去り他力に任せる「自然法爾」や「不断煩悩得涅槃」の教えは森田療法に通じる。なお倉田百三は、患者の立場から親鸞の『歎異抄』のみならず道元の『正法眼蔵』の思想をも鼓吹した点で注目される。総じて顧みれば、仏教や森田療法は苦や煩悩を生き抜く「ネガティブ・ケイパビリティ」の叡智そのものであり、今後もそれが生かされることを望んでやまない。 

森田療法成立100年にかかわる学会シンポジウム

2019/08/28

  2019年の今年は、森田療法成立100年に当ります。
  第37回日本森田療法学会(2019年10月5日,6日 浜松)で森田療法成立100年にかかわるシンポジウムが設けられ、そこで、仏教や禅と森田療法の関係とその流れについて、発表させて頂く予定です。
 
  学会プログラムへのリンクをつけておきます。
 
http://www.pw-co.jp/jsmt2019/files/program.pdf
 
 

社会教育と森田療法の合流 ―下村湖人らの「新風土」から水谷啓二の「生活の発見」へ―(「生活の発見」誌本年4月号掲載)

2019/04/05

  昨年5月に高良興生院・森田療法関連資料保存会の「春の心の健康講座」で発表させて頂いた「社会教育と森田療法の合流 ―下村湖人らの「新風土」から水谷啓二の「生活の発見」へ―」の講演録が、生活の発見会の御好意で、「生活の発見」誌の本年4月号に掲載されました。
  『森田療法と熊本五高』の本に収められた拙稿と内容は重なりますが、強調して話しているところなどに、微妙な差が出ております。
  原稿の全文をここで掲載することは控えて、冒頭のページのみ、以下に出しておきます。



 

『森田療法と熊本五高―森田正馬の足跡とその後―』出版の再紹介―京都の片隅から―

2019/01/11




 
  『森田療法と五高―森田正馬の足跡とその後―』の本が、昨年12月25日付けで出版されましたので、改めてご紹介します。
  一昨年秋、熊本大学で、「森田療法と五高」をテーマに、藤瀬昇教授を大会長として、日本森田療法学会が開催されました。それを機に、関連するいくつかの珠玉の原稿を学会後に集めて、一冊の本として編んで出版したのが、この本なのです。
  ご縁を得て、編集の末端に関わらせて頂きましたが、さまざまな原稿を一冊の本にまとめる作業は、それは大変で、中心におられる藤瀬教授の地道なご苦労は、筆説に尽くし難いものでありました。それだけに、熊本五高と森田正馬や森田療法について、このような類書のない本を上梓できたことは、私たちの喜びとするところです。

 五高在学中に森田正馬は精神医学への道を志した。剛毅朴訥の純なる風土で、森田療法への芽が吹いた。療法を継承して「生活の発見会」を創成した水谷啓二。水谷に合流した社会教育の下村湖人や永杉喜輔。何という巡り合わせ。彼らも皆、五高出身者であった。正馬の故郷は高知だが、森田療法の故郷は熊本である。

  おもて表紙の帯の部分に、本の主旨や中身を示す案内文を載せていますので、その部分を切り取って上に再度掲げました。
  下の画像は、目次ページです。著者たちと執筆された原稿のタイトルがわかります。



  京都の片隅より、くまモンに愛をこめて―
  裏表紙にくまモンの図をあしらうことを提案させてもらいました。



  この本は、アマゾンで購入していただけます。
  熊日出版のネット販売のサイトからも、購入できます。
http://shop.kumanichi-sv.net/shopdetail/000000001320

『森田療法と熊本五高―森田正馬の足跡とその後―』発刊

2018/12/23




 
 『森田療法と熊本五高―森田正馬とその後―』の本が、熊日出版より発刊されました。
  執筆者の人数が多くて、さまざまな原稿を収めているため、編集の完了までに時間がかかり、刊行が遅れましたが、ようやく日の目を見ました。
  一部書店の店頭やアマゾンなどの通販で発売されますが、店頭やウェブ上に出るのは、年が明けて1月9日頃になりそうです。
  なお、予告チラシに記入されたページ数より、かなり増ページとなり、定価は予価より200円上がって、1200円になりましたが、事実上安価過ぎる定価設定です。どうぞよろしくお願いいたします。

『森田療法と熊本五高』(今秋発刊予定)

2018/10/15




編集作業の仕上げのため、少し遅れていましたが、熊日出版より近く刊行予定です。

森田療法保存会の秋の心の健康講座のご案内

2018/09/13

高良興生院・森田療法関連資料保存会の秋の心の健康講座のご案内です。



 
 

森田療法保存会で講演をさせて頂きます。

2018/04/13


 

   高良興生院・森田療法関連資料保存会の2018年春の心の健康講座(第2回目、5月13日(日))で、比嘉千賀先生と一緒に講演をさせていただきます。
   タイトルなどは、チラシ画像を参照して下さい。

宇佐玄雄の講話音声の資料CDの提供について

2017/12/23


講話をしている晩年の宇佐玄雄先生



 

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   平成29年末に、三聖病院が閉院になって早くも3年になります。
   3年前のその時、閉院と同時に建物解体作業が開始され、院内の貴重品は院長の指揮の下に保管などの対処がなされ、不要とみなされた物品は「ごみ」として院内のあちこちの隅に残されました。放置すれば処分されるこれらの残物を、建物の解体が始まる直前の年末に見直しをしたところ、残物の中に、宇佐玄雄先生の講話の古い録音テープと、音声資料をMDに移したものを発見したのでした。録音テープは、原資料ではなく、断片的なもので価値はなく、MDの方には、かなり元の講話音声が収録されていました。もちろん、これとて、元の録音テープから移されたものです。それは同一回または複数回の講話音声を、継ぎ足して編集したものですが、この講話音声資料は貴重なものです。
   当研究所として、その資料を預かって保存してきましたが、この音声資料を関心のある皆様に提供する方法を考えながら時間が経ちました。MD内のデータをパソコンに移したり、CDに入れる作業が必要になります。今年になって、ようやくアルバイト職員やボランティアの方の手を借りて、音声の一部を当方のホームページで聴いて頂けるようにしました。そして引き続き、今秋には、音声を収めたCDを複数枚制作できるようになり、一部の研究者の方々にお届けしているところです。
   さて、この度三聖病院の初代院長の宇佐玄雄の講話音声を、研究または勉強のためという純粋な動機から、聴きたいと希望される方々に、CDを提供することに致します(興味本位の方はご遠慮下さい)。ご希望の各位は、通信フォームから、必須項目だけでなく、すべての項目に記入頂き、ご希望の旨をご送信下さい。一枚ずつ、手作りでCDを制作しますので、希望者が多ければ、時間が、かかるかもしれません。また、制作の実費(人件費、送料など)として、後払いで千円(見込み)を申し受けることになると思います。
   ご関心のあるお方は、当研究所の今年のブログのバックナンバーから、講話音声の抜粋を聴けますので、試聴されることをお勧めします。
   なお、講話のCDは、宇佐晋一先生に既にお届けしていますので、三聖病院や三省会の関係者でCD希望の方々は、なるべくそちらの方面にご相談下さい。

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